画像が表示できない…。

内容
看護師のガールフレンド・カリーナから突然廃工場に呼び出された刑事弁護士のロベルト。彼女は脳腫瘍で重篤な患者・10歳のジーモンを連れて救急車で現れた。
ジーモンは「前世で15年前に人を殺し、この工場に隠した」と語る。実際白骨死体を発見したロベルトは、第一発見者として逆に警察に疑われることになる。
死体の身元は犯罪者だった。その後も前世での犯罪を語り始めるジーモン。その通りに死体を見つけるロベルト。
そんなロベルトの自宅に届けられたDVDには、乳幼児突然死症候群で亡くなったはずの我が子が殺される場面、そして我が子と同じ場所に同じ形の痣がある少年が写っていた。我が子は本当に死んだのか? 痣のある少年は誰なのか? 輪廻転生は本当にあるのか? 前世とは? そして死体として見つかった犯罪者たちは何故、誰に殺されたのか?
ロベルトは否応無しに事件に巻き込まれ、そして真実を突き止めていく。

動機
たまたま立ち寄った本屋の一等地に平積みされていた1冊です。
私は行ったことも無いのにドイツ好きなのですが、これがドイツ人作家による作品だと言うことと、帯にあった「少なくとも、10回の絶叫をお約束します」のコピーに惹かれ、読んで見たいと思いつつ、翻訳物は当たりはずれが多いからとこれまた図書館で借りることに。
出版されてそれほど日が経っていないためか、かなり早く順番が回ってきました。

感想
タイトルだけで判断すると、スピリチュアル関係の本かな? と思いそうですが、いわゆるサイコサスペンス(ミステリーって言うほどの謎解きはありません。犯人解明や推理に至るまでのヒント・手がかりは殆どありません)です。余命少ないジーモンに希望を持たせる為に、カリーナが受けさせた前世療法がきっかけで、次々死体が発見されていきます。
児童買春の実態(本当にこうなんだろうか?)と、犯人に辿り着くまでの主人公の心境の変化などを読み取っていくストーリーです。

翻訳物ですが、訳者が丁寧に翻訳しているので、文章に違和感がありません。たまに違和感タップリの翻訳文に当たり、スムーズに理解できないことがありますけれど、その点は安心です。ぐいぐいと読み進められます。

読後の感想を一言で言えば、「典型的」。このようなサイコモノは、核となる事件はそれぞれ異なっていても、結局は同じような展開になっていくのですね。実際、以前どこかで読んだような…? でも思い出せない、と言った印象を持ちました。
なので、ハラハラする…というか、させようとする場面はあるのですが、先が読めるので冷静に読めます。
面白いミステリーだと何度も読み返して伏線を探したりするなど、何度も楽しめるのですが、これは読み終わってももう一度読み返そうなどとは思えなかったです。
またラストがよくあるパターンで、これがガッカリでした。

作者が映画化を前提として書いた、売れ筋のサスペンス。児童買春が非常に現代的な問題なのと、主人公の感情を大切に描いている点、そして登場人物たちが私的に好感の持てるタイプばかりだったのが、最後まで読ませたと思います。
訳者が巻末の解説にこう記載しています。「仕事以外では無気力の塊のような彼(ロベルト)が、不治の病に冒されたジーモンに出会い、保護する対象を得たことで、次第に精神的な麻痺状態から立ち直り、生きる意欲を取り戻していく。その意味で、これは癒しの物語である」。
その通り、これはミステリーとしてでもサスペンスとしてでもなく、一人の男性が精神的に癒され立ち直っていく過程を読む小説なのだと思いました。

ちなみに、10回どころか1回も叫ぶようなシーンはありませんでした(苦笑)。

コメント