内容
新設・1年ばかり10人の県立高校野球部が、5回戦進出。
対戦相手は20才の学生監督・滝井率いる美丞大狭山高校。
だが研究され尽くした西浦は、美丞にいきなり3点を先取されてしまう。

自分のリードが通じず焦るキャッチャー・阿部。
その阿部のリード通りに投げるエース・三橋。

今までと違う。だが、何が?

四番・田島と西浦の女性監督・百枝が美丞の策に気づく。
そして阿部も百枝も気づかなかった阿部のリードの特徴に、三橋が気づく。

さあ、反撃できるのか?

動機
1年半前に突然ハマり、それから一気に揃えました。
同時に本誌も読み始めたのですが、コミックスとの間のつながりが分からず、ファンサイトの感想を参考にしていました。
何と本誌掲載から2年遅れ。私が本誌を読み始めた時にもまだ追いついていませんが、あともう少し!
色々な事情があるのでしょうが、しかし、コミック発売が遅すぎる~!

感想
丁寧な分、展開が遅いせいか、この漫画のファンサイトさんも閉鎖したり、更新が途切れるまたは更新が極めて遅くなりつつあります。
そういう私もテンションが下がってきていました。一時は同人誌まで購入していたのに!

でも、この巻を読んで“おおふり”熱が甦ってきました。
三橋・阿部以外の主要人物の内面描写が多く、試合も動き出してこの後の展開が(本誌を読んで分かってはいるのですが)楽しみになってきたからだと思います。

呂佳は何を考えているのか? 河合の気持ちに変化はあるのか?
西浦の反撃はあるのか? 西浦バッテリーの関係に変化はあるのか?
田島と花井のライバル関係はどうなるのか? 勝敗の行方は?

野球部員ってこんなに良い子ばっかりじゃないとは思うけれど、熱血だけじゃない、理想だけじゃない、ヒーローだけじゃない。
そんな等身大の野球を感じさせてくれる作品です。

memo
「……ひ 悲観的なことばっか
考えててもしょーがない ぞ!
点は……次に取ってくれる
オレはココを抑えなきゃ」
(美丞戦で1回表3点を取られ、その裏、西浦の攻撃は0点。動揺する阿部を見て不安に思う三橋を主将・花井が元気付ける。その際に三橋が思ったこと)


「そんなふうにわざとらしくケムたがられちゃ
よけー どっか行けないスねェ」
(スタンドからサインを送っているのではないかと疑った河合にイラつく、美丞コーチ・呂佳への河合の言葉)

河合は西浦に負けた強豪チームの主将です。
高校3年とは思えない落ち着きと思慮分別と、やはり高校生らしい感情の起伏を抱え、負けた悔しさと西浦への複雑な思いが原因で野球に向き合えなくなっていますが、それでも乗り越えようとしています。
それまではちょっと理想的過ぎるかな、と思わない訳ではなかったけれど、今回は弱さや純粋な正義感も見せてくれました。大好きな登場人物の一人です。

「また1点 返したぞ
オレ は 打てなくても 他の人が 点 入れる
これが…… チームなんだ!」
(三橋はバント失敗でその回を終えるが、花井以下の選手が打って1点を入れる。マウンドに上がった三橋が思ったこと)

内容
陸上経験者3人、あとは陸上未経験の10人のチーム、
寛政大陸上部は予選会を通過して箱根駅伝を迎えます。
前回は2区前半で終っていました。

2区のエース区間をケニアからの留学生・ムサは
ゴール直前で6人を抜き、双子の兄ジョータに襷をつなぎます。
ジョータの大きな勘違いで兄は活躍し、4区で弟のジョージは失敗してしまいます。
そして風邪で体調を崩す神童に、
苦しい順位で最長区間にして山道ばかりの5区を走らせることに。

走りきった神童。その神童の走りそして気持ちに、
クールなキャラでも心を動かされ、復路スタートの6区をユキは激走。
区間2位で7区ニコチャン先輩につなぎます。意地を見せるニコチャン。
そして8区でニコチャンを待つキングが、主将ハイジの膝の状態を知ってしまう…。

動機
もともと原作のファンで、コミックも1~4巻まで持っており、待ちに待った最新刊です。

感想
ケニアからの留学生・ムサが権太坂で他校の選手に抜かれてしまい、
必死に苦手な坂を上って追いつきます。
追いついたムサは、自分と同じように苦しさを抱え、
自分と同じ場所を目指し走る他校の選手に共感し、
この人たちが居たからここまで走れた、そう感じています。
こういう関係を親しくはなくとも「同志」というのでしょうね。

原作、そしてコミックを通じて描かれているムサは、高潔といっていいと思います。
コミックでは余りはっきりと描かれていないけれど、
原作ではよくわかる、ムサと強い信頼関係で結ばれているのが神童です。

5区で見せる神童の走りと精神力。
その神童の“強い”こと。神童というよりはまさしく鬼のごとく迫力です。

この漫画の中のアオタケメンバーは、自分たちを鼻で笑ったり、
ペースメーカーとして利用する他校の選手に腹を立てることなく、
冷静に穏やかに全力を尽くして与えられた区間を走っています。

勝負の世界ですから当然なのかもしれませんが、個人的には立派だなって思います。
私の場合、自信を失いがちなので…。

この5巻までで、原作で私が好きなエピソードがことごとくカットされているのが寂しい。
箱根駅伝の走者決定時、2区を任されたムサが抵抗を示した際、走が語ったエースの意味。
6区スタート前、神童がユキに言う言葉。

これはカットされていなかったけど、ひとこまで終っていたエピソード、
2区スタート直前、神童からムサへの電話。

…おや、ムサと神童がらみばかりですね。

この漫画は月刊ヤングジャンプに連載されているのですが、
なぜか色々な本屋さんや雑誌が充実している漫画喫茶になくて、
4巻を読んで5巻発売まで、その後がすごく気になっていました。

が、先日偶然入ったコンビニで、月刊YJ最新号を発見。そうか、コンビニにあったのか。
ちなみに、ニコチャンが頑張っていました!!

memo
「私をペースメーカーにして追い抜いていった人たち…
…ああ!! この人たちも私と同じ苦しいのダ…!!!
自分の力だけではここまで来れマセンデシタ
となりにこの人たちがいなかったら脚は動いてないかもシレナイ
仲間や沿道の人たちの声に押され
私たちは同じ場所を目指して走っているのデス
肌の色も国の違いも関係なく
私たちは敵同士であって敵同士ではナイ
日本に来てこんな形で誰かとつながれるとは思いもしなカッタ」
(2区を走るムサが他校の選手に追いついて思ったこと)


「ははっ ちくしょう 何が奇跡だ
現にこうして箱根駅伝を走ってんのによ…!!
ユキのがんばりを無駄にはできねえ!!
オレにだって 意地があるんだ!!」
(7区を走るニコチャンが走りながら思うこと)

内容
竹青荘に住む寛政大学4年生・清瀬灰二は、「あと一人」を熱望していた。
そんな灰二の前に、コンビニで万引きして逃げる男が通る。

インターハイで優勝するほど実力のあるランナー、蔵原走。
監督を殴って高校陸上部を退部になり、進学が決まっていた名門大学の推薦も取り消されてからは、一人で走って実力を極めようと考えていた。

「あと一人」がこの男だと直感した灰二は、追いかけて捕まえてこう言う。

「オレと一緒に箱根駅伝を目指さないか?」

竹青荘(アオタケ)に住む、他のメンバー8人も巻き込んで、箱根駅伝への挑戦が始まる。

三浦しをんの同名小説の漫画化。現在4巻まで刊行されています。

動機
もともと箱根駅伝を(テレビで)観戦することが好きで、箱根駅伝を扱った原作が好きで、それが漫画になったことを知り、読みたくなったのがきっかけです。

好きな小説の漫画化やドラマ化には、好き故に自分の中でイメージが作られすぎているせいか、がっかりさせられるのが常なので、購入するのをためらっていました。

時々行く漫画喫茶に行って探してみたのですが無く、そんな中、外勤後お弁当を食べようと入った、持ち込み可能な漫画喫茶で見つけました。
絵も丁寧で綺麗、原作に忠実ながらオリジナルな箇所もあり、一読後、購入を決めました。

感想
原作好きな方も大満足できる内容です。

絵が本当に丁寧で綺麗。
原作者は男性名ですが、女性。
男性なのに、女性的な絵柄の漫画家さんなんだな~、と思っていました^^;
長距離ランナーらしい体つきや走っている最中の描写など、陸上を題材にした作品が多いらしい(byウィキペディア)のも納得です。

原作に忠実でありながら、オリジナルなキャラやエピソードに好感持てるのがいい!! すっごくいい!!!
オリジナルなキャラとしては、走の高校時代の先輩・古賀やその友人(で古賀の大学のマネージャー)の松平など。

ところどころにコミカルさもあり、シリアスさも上手く同居していて、本当に面白い作品です。

原作ではイヤ~なヤツ(走の高校時代のチームメイト・榊)も居たりしますが、こちらの漫画には、今のところ、嫌なヤツは居ません。榊もカワイイ(笑)ヤツに描かれています。
もっとも、原作中の榊もそんなに嫌なヤツではないんですよね。こうなってしまうのも無理ないかな、って思えましたから。

灰二の高校時代のチームメイトで、名門・六道大学主将の藤岡がカッコいいです。
何がカッコいいかというと、言動がカッコいいんですよね。終始言動が首尾一貫しています。自分の中でブレない芯がある。
こういう人って、実際居るのかな?
スキンヘッド+広島弁、最高!(笑)。

アオタケメンバーの中で一番好きなのは、漫画オタクの“王子”。
私、オタク好きなんですよね^^; 画像に本の表紙が出ていますが、3人のうちの一番奥に居ます。

灰二と走以外では、一人陸上経験者が居ますが、7年のブランクがある。
他の7人は陸上経験なし。うち一人は万年文化部。
そんな10人ぎりぎりで、半年で5000メートル17分を切り、予選会を突破して箱根駅伝出場。
実際有り得るのか、と言われればそれまでですし、メンバーが灰二に従って箱根を目指す理由も、苦しいといえば苦しい。

それでも、そういった現実感を超えたきらきらしたものを、
コンプレックスや挫折や苦悩を抱えながらも頑張る綺麗なものを、
『風が強く吹いている』は見せてくれます。原作の小説も、この漫画も、です。

これだけ原作に敬意を払って漫画化されたら、原作者の方も嬉しいだろうな、って思っていました。
2巻から、原作者・三浦しをんさんの後書きが加わっていて、納得させられました。
「海野先生に描いていただけてよかったと、毎回喜びを噛みしめております。」

memo
「プレッシャーをやすりに変えて心身を研磨する
研ぎすぎて本番前にポッキリいっちゃいけないし
かといって研ぎが鈍くて曇ってても話にならない
薄く鋭く研ぎすませ」
(予選会が近づき、不安になるメンバーに灰二が言った言葉/3巻)


「お前は自分のこと以外よいよ興味にゃあようじゃが
外の世界はもっと広ぉて深い
今だけが全てじゃのうて脈々と重ねられた歴史の中にわしらも生きとるんよ」
(走に対して六道大・藤岡が言った言葉/4巻)


「楽しゅうないなら走るのやめりゃええゆうて
簡単に言うようなヤツにゃあ何もわかりゃせんじゃろう
好きじゃ嫌いじゃ楽しいじゃ楽しくないじゃ
わしらはもうそんなところで走っとりゃせんのじゃ」
(走に灰二の過去を教える際に六道大・藤岡が言った言葉/4巻)

何も知らない人間が、軽々しく言ってはいけないことがあるのです。
それがどんなに些細なことでも、人それぞれ大切なものは違うのですから。

内容
舞台は埼玉県立西浦高校の1年生ばかり10人の新設硬式野球部。監督は若い女性。主人公は卑屈さと頑固さを併せ持つ9分割の神業コントロールを持つ投手。
野球に限らずスポーツをテーマにした漫画によくある、根性とかカリスマとか関係ない。今までに無い野球漫画です。
作者は大学で心理学を専攻していたそうで、登場人物それぞれの細やかな心理描写が印象的です。

10巻は、9巻に引続き夏の予選会3回戦。対戦相手は崎玉高校。たった一人の3年生のために頑張っているチームです。
この崎玉の部員達もとてもいいキャラクターばかり。泣き虫の1年生捕手の5番打者。ツンデレ?な2年生投手。そして次々部員が辞めていったことで厳しく出来ないたった一人の3年生主将。
5巻から8巻までのシード校との戦いでも思ったことですが、勝ったチームばかりじゃなく、負けたチームにもドラマがある事を実感できます。

西浦の5番(今大会では4番)・花井と、4番(今大会では怪我の為1番)・田島。
体型から家族設定まで、徹底して対称的に設定された2人を、この3回戦では花井目線で描いています。

動機
話題になっていたのはだいぶ前から知っていたのですが、絵がどうも苦手で読まず嫌いだったこの漫画。
周囲に好きな人がいて、その人の影響を受け読んだのが昨年末。すっかりはまってしまいました。
気になった絵も、巻が進むにつれ、生意気な言い方ですが綺麗になっていって、全く気にならなくなりました。
9巻まで揃え、待ちに待った10巻です。

感想
この漫画にはまり、あり得ないほどはまり、ファンサイトを巡り、なんと同人誌まで購入する始末…!!
いわゆる、やおいだとかBLと呼ばれるジャンルです。…あ、ほのぼのした描写のものばかりですけれどね^^;
ちなみに、花井が登場人物の中でいちばん好きです。なので9巻と10巻は成長を信じられる流れが嬉しいです。
花井好きの同人サイトさんの中には、花井が“ぐるぐる”しているせいなのか、この10巻を「辛くて読めない」と言ったコメントがありました。
この漫画、月刊誌に連載中ですが、今現在連載中の内容を知っている者(=私)と、先を知らずコミックスの内容をリアルタイムで読んでいた人(=コメントしていた同人サイトの管理人さん)とでは、やはり抱く感情が違いますね。

それにしても…コミックス出版が遅すぎる!!

memo
「あいつらとオレで何がちがうんだ 実力とか才能とか境遇とか ンなこと言い出したらなんもできない 口実さがしてんじゃねェんだよ!」
花井がいちばん“ぐるぐる”していた時の言葉。言い訳とか理屈とか、そんなものが要らない生き方は辛いけれど、潔いものです。