『メモリー・キーパーの娘(キム・エドワーズ 日本放送出版協会刊)』
2009年2月11日 こころ豊かに
内容
1964年、医師・デイヴィッドとノラ夫妻に男女の双子(ポールとフィービ)が誕生するが、女児はダウン症だった。
デイヴィッドは妻を悲しませたくないがため、看護師・キャサリンに施設に預けるよう依頼する。
キャサリンは施設の現状を知り、自分で女児を育てることにする。
妻には女児は死んだと嘘をつくデイヴィッド。
その嘘が見えない壁を作り、人間関係を、愛情を、もつれさせてゆく。
動機
本屋さんで平積みされていた1冊です。
ダウン症を扱った硬派な内容だと思ったこと、また、訳者の後書きによると、実際にあったエピソードを基に作られた物語だということ(知らないうちに誕生後施設に預けられたダウン症の兄弟がいた人の話を著者は聞いたことがあるそうです)に興味を持ちました。
帯の高見恭子さんの安直なコピーに引っかかりながらも、図書館で予約しました。
感想
読んだことないのですが、ハーレクインロマンスって、こんな感じなのかな?と言う印象。
都合よく物事が進む。または自分を正当化する言動が目に付く。
デイヴィッドのしたことは、自分が貧しい家に生まれて苦労したこと、病気の妹がいたことから始まった自分の子供時代のような不幸を、家族に経験させたくなかったから、と言うのがどうやら最大の理由らしいのですが、それが物語中で明確ではないのでなかなか理解できません。
もっとも1964年当時、ダウン症児を施設に預けることは、実際によくあることだったらしいのですが。
後半、自分の生家に無断で宿泊していた妊娠中の家出娘を引き取るなど、それは自分が実質捨ててしまった娘・フィービへの贖罪を兼ねているのかもしれませんが、デイヴィッドの心情となかなか結びつかず、さらに物語の展開上必要なのかも考えてしまいました。
そしてノラ。
夫が医師であることを納得して結婚したはずなのに、急患のため帰宅が遅いことや休みが少ないことに大きな不満を抱いている。ただのワガママにしか見えません。
パートの仕事が面白くなり、ついには事業を買い取って成功を収める。
事業家として成功を収められそうな要素が描かれていないので、都合よすぎると思いました。
数年にわたって浮気を続ける。その浮気を無言で受け入れる夫。
それに甘え、むしろ夫のせいにして満たされない感情を家の外で発散させようとする姿勢には、何一つ共感できませんでした。
キャサリンも、血縁関係のないダウン症児を抱え、看護師の資格を生かして新天地で生活を始めますが、理解ある雇い主のもと、ダウン症児を抱えた母親としては理想的な家付きの仕事を見つけ、全てを知って受け入れてくれる男性と知り合って結婚、さらには雇い主から家まで無償提供されています。
フィービの将来に不安を抱き、調べ物をしに行った図書館で知り合った女性も同様にダウン症児を抱えており、一緒に子供の権利を守るために活動を始める。
その活動も少しの説明しかないので、どれほどの頑張りか伝わりにくいです。
どれほどの愛情や信頼関係を築いていったかのプロセスが随分と省略されているので、結婚や家を提供される点が、これまた都合よい印象を持ってしまいました。
キャサリンがフィーヴィを引き取った理由…彼女の孤独が、彼女が信頼されるに納得できる言動が、本文中にもっとあれば。
もっとも、ノラに比べれば、終始一貫したものがあるので共感できるのですが。
前半から中盤までは、読むのやめようかと思ったほどです。
登場人物に共感できないまま読むのが苦痛でした。
説明に比喩が多く、感覚的に理解させようとしているのか、それもイヤでした。
それでも、全米でロングセラーになったという理由を知りたい一心で、読み進めていきましたが。
後半になり、少しずつ納得できる展開になってきたので、読み終えることができました。
ダウン症児についての血のつながらない母娘の葛藤や世間との戦い、知らずに生活する実の家族の対比。
そんな内容を想像していたのですが、そうではありませんでした。
ダウン症はただの設定。愛情があっても心通わせられない家族の悲しみ(デイヴィッド、ノラ、ポール)と血縁関係がなくとも築き上げられる家族の信頼(キャサリンと夫のアル、フィービ)。
ダウン症は2つの家族を結びつけるひとつの設定だったようです。
memo
1964年、医師・デイヴィッドとノラ夫妻に男女の双子(ポールとフィービ)が誕生するが、女児はダウン症だった。
デイヴィッドは妻を悲しませたくないがため、看護師・キャサリンに施設に預けるよう依頼する。
キャサリンは施設の現状を知り、自分で女児を育てることにする。
妻には女児は死んだと嘘をつくデイヴィッド。
その嘘が見えない壁を作り、人間関係を、愛情を、もつれさせてゆく。
動機
本屋さんで平積みされていた1冊です。
ダウン症を扱った硬派な内容だと思ったこと、また、訳者の後書きによると、実際にあったエピソードを基に作られた物語だということ(知らないうちに誕生後施設に預けられたダウン症の兄弟がいた人の話を著者は聞いたことがあるそうです)に興味を持ちました。
帯の高見恭子さんの安直なコピーに引っかかりながらも、図書館で予約しました。
感想
読んだことないのですが、ハーレクインロマンスって、こんな感じなのかな?と言う印象。
都合よく物事が進む。または自分を正当化する言動が目に付く。
デイヴィッドのしたことは、自分が貧しい家に生まれて苦労したこと、病気の妹がいたことから始まった自分の子供時代のような不幸を、家族に経験させたくなかったから、と言うのがどうやら最大の理由らしいのですが、それが物語中で明確ではないのでなかなか理解できません。
もっとも1964年当時、ダウン症児を施設に預けることは、実際によくあることだったらしいのですが。
後半、自分の生家に無断で宿泊していた妊娠中の家出娘を引き取るなど、それは自分が実質捨ててしまった娘・フィービへの贖罪を兼ねているのかもしれませんが、デイヴィッドの心情となかなか結びつかず、さらに物語の展開上必要なのかも考えてしまいました。
そしてノラ。
夫が医師であることを納得して結婚したはずなのに、急患のため帰宅が遅いことや休みが少ないことに大きな不満を抱いている。ただのワガママにしか見えません。
パートの仕事が面白くなり、ついには事業を買い取って成功を収める。
事業家として成功を収められそうな要素が描かれていないので、都合よすぎると思いました。
数年にわたって浮気を続ける。その浮気を無言で受け入れる夫。
それに甘え、むしろ夫のせいにして満たされない感情を家の外で発散させようとする姿勢には、何一つ共感できませんでした。
キャサリンも、血縁関係のないダウン症児を抱え、看護師の資格を生かして新天地で生活を始めますが、理解ある雇い主のもと、ダウン症児を抱えた母親としては理想的な家付きの仕事を見つけ、全てを知って受け入れてくれる男性と知り合って結婚、さらには雇い主から家まで無償提供されています。
フィービの将来に不安を抱き、調べ物をしに行った図書館で知り合った女性も同様にダウン症児を抱えており、一緒に子供の権利を守るために活動を始める。
その活動も少しの説明しかないので、どれほどの頑張りか伝わりにくいです。
どれほどの愛情や信頼関係を築いていったかのプロセスが随分と省略されているので、結婚や家を提供される点が、これまた都合よい印象を持ってしまいました。
キャサリンがフィーヴィを引き取った理由…彼女の孤独が、彼女が信頼されるに納得できる言動が、本文中にもっとあれば。
もっとも、ノラに比べれば、終始一貫したものがあるので共感できるのですが。
前半から中盤までは、読むのやめようかと思ったほどです。
登場人物に共感できないまま読むのが苦痛でした。
説明に比喩が多く、感覚的に理解させようとしているのか、それもイヤでした。
それでも、全米でロングセラーになったという理由を知りたい一心で、読み進めていきましたが。
後半になり、少しずつ納得できる展開になってきたので、読み終えることができました。
ダウン症児についての血のつながらない母娘の葛藤や世間との戦い、知らずに生活する実の家族の対比。
そんな内容を想像していたのですが、そうではありませんでした。
ダウン症はただの設定。愛情があっても心通わせられない家族の悲しみ(デイヴィッド、ノラ、ポール)と血縁関係がなくとも築き上げられる家族の信頼(キャサリンと夫のアル、フィービ)。
ダウン症は2つの家族を結びつけるひとつの設定だったようです。
memo
「(略)たしかにあなたは、たくさんの苦しみを回避できたと思う。でもデイヴィッド、その分味わえなかった喜びも多い」(334頁)
「(略)待ちたくなんかない。ただそれだけだった。若い日の彼女は、ひたすら待ち続けた-人に認めてもらうことを、冒険を、愛を。フィービを抱いてルイヴィルの施設を飛び出したとき、荷物をまとめて町を出たとき、はじめて本当の人生が始まった。待つことが吉と出たためしは一度もない。」(337頁)
「(略)これが私の生活。かつて夢見ていたものとはほど遠いし、若いころの自分が想像していた、あるいは望んでいた人生とはだいぶ違うかもしれないけれど、これが私の生きる毎日だ。それなりの複雑さや問題を抱えてはいるものの、私が注意深く、入念に築きあげた、すてきな人生。」(340頁)
「あなたには思いどおりに生きる権利がある。でもお父さんの言うことも正しいの。人生にはつねに制約がつきまとう。そこを切り拓いてこそ、あなたは独り立ちできるの。」(411頁)
「(略)これからずっと、僕はこんなふうにとまどい、胸を痛めるのだ。フィービの不器用さに、人とちょっと違うからというだけで彼女が直面する困難に。でも、彼女のてらいのない純粋な愛情があれば、そのすべてを乗り越えられる。」(543頁)
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