内容
ギャンブル狂の映像ディレクターの小峰は、友人・村瀬に誘われて、
池袋最大のカジノの売上金強奪を計画する。
金を分ければ散り散りになる名前も知らぬ寄せ集めの人間たち。
カジノ店の店長が協力している狂言強盗。成功するはずだった。
だが銃撃役の中年男の裏切りによって、村瀬は死に、1億円は奪われる。

そしてカジノ店を仕切るヤクザ・氷高組に自分や共犯者たちの正体はバレ、
借金を背負い一生氷高組で下働きするならと、
小峰は自分が強奪犯を見つけ金を取り戻すと宣言してしまう。

お目付け役の“サル”と共に、小峰は池袋の街を自分の記憶を元に探し始める。

これはマコトではなく、マコトの友人でヤクザのサルこと斉藤富士男と、
売れない映像ディレクター小峰が中心となった、ミステリーと言うよりもサスペンス。
画像は文芸春秋社刊の文庫となっていますが、私が読んだのは徳間文庫です。

これで3作連続の『池袋ウエストゲートパーク』シリーズ。
こちらは長編の外伝となっています。

動機
ずっと気になっていたこの外伝。
なかなか読む機会、というよりも図書館で借りる機会がなかったのですが、
続けてシリーズを図書館で予約。

出勤途中などで読めるよう、文庫本を借りました。

感想
ありきたりな言葉ですが、「スタイリッシュなクライム・サスペンス」と言う感じです。王道です。
でも、やっぱりこの頃の作品には「キレ」があります。

結末は予想できるし、実際その通りだったのですが、それでもドキドキできる展開です。

池袋の裏街道を生きる、ギャンブラーやゲイバーのママ。
フィリピンホステスに、小峰の恋人の売れない女優兼ホステス。

何となくこういうストーリーにはありがちな人物が、ありがちな役割を担っています。

都合よく、引退していた伝説のギャンブラーが登場し、そして小峰の逆転劇が始まる。

確かに都合いいのです。
でも、「今」何が起こっているのか、正確に描かれているから、
そして登場人物たちの「ギリギリ感」を理解できるから、
リアルさを感じ、この小説は面白いのだと思います。

memo
「「あなたにできることは他にある。勝負を張るなら、そこでおやんなさい。勝っても負けてもきちんと自分の身につくことがある場所で。博打は負けたらゼロ、そこで倒れて死ぬだけよ」(269頁)」
(伝説のギャンブラー・アベケンを探す際に出会ったゲイバーのママが、小峰に言った言葉)

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